垰瀬内シリーズ

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垰瀬内シリーズ(たおせないシリーズ)は、Youtubeやニコニコ動画などで見られる、替え歌のジャンルの1つである。

概要

主に地名・駅名などを並べ合わせて、原曲の歌詞らしく聞こえるようにした替え歌である。

通常の「駅名替え歌」は、原曲のリズムに合わせて「ある1つの路線の駅名を順番に」歌うものである。しかし、「垰瀬内シリーズ」は、「駅の順番は無視して、原曲の歌詞に限りなく近く聞こえるように駅名を並び替えて」歌ったものである。例えば「瞳を閉じて」という歌詞であれば「人見(ひとみ) 大戸(おおと) 尻手(しって)」のように歌ったものがそれに該当する。

垰瀬内シリーズ」の発端となった動画は「エアーマンが垰瀬内」である。これは、「エアーマンが倒せない」の歌詞を日本の市区町村を用いて再現したものである。後に投稿された動画でも「垰瀬内」という単語が使われるようになり、このシリーズ名が定着した。

地名・駅名以外に、苗字を並べ合わせて原曲の歌詞らしく聞こえるようにしたものもあり、これも垰瀬内シリーズと呼ばれる。

ちなみに、「エアーマンが倒せない」の替え歌は「倒せないシリーズ」と呼ばれる。読みは同じだが両者は全く異なるシリーズであり、「垰瀬内シリーズ」は「地名・駅名・苗字・野球選手名などを並べ合わせて、原曲の歌詞らしく聞こえるようにした替え歌」という特性を持った替え歌全てに対する名称であるため、「エアーマンが倒せない」以外の曲でこのような替え歌を作った場合も「垰瀬内シリーズ」と呼ばれる。

最近では、通常の地名や苗字を用いたものよりも、駅名を用いた動画が多く投稿される傾向にある。そのため、垰瀬内シリーズといえば駅名による替え歌というイメージが定着しつつある。なお、想像地図研究所では垰瀬内シリーズの作詞を行うことを日本駅名語への翻訳であると定義し、人工言語として扱っている。

なお、野球選手名での垰瀬内シリーズは「やきゅうた」と呼ばれることが多い。

初期においては「何となく語感の似ている駅名を並べて歌った動画」が多かったが、2015年以降は「母音を一致させる」「限りなく発音の近い駅名を並べて歌う」というように厳密化が進み、技術競争の様相を示している。

縛り

駅名を使った垰瀬内シリーズに元より存在する縛りは、ただ「日本にある駅名だけを並べ合わせて、原曲の歌詞に限りなく近く聞こえるように歌う」ということだけである。しかし、動画作者によってはそれ以上の縛り(制限)を自ら課すことによって、より難易度の高い動画を作る人も居る。

重複ゼロ縛り(重複なし縛り)

たとえ同じ歌詞フレーズが繰り返す部分であっても、1度登場した駅名は2回以上使わないという縛り。Youtubeでもニコニコ動画でも、「1度登場した駅名を2回以上登場させることは『粋』ではない」と考える視聴者が一定割合で居るようである[1]。そのためこの縛りを与えて製作された動画が多く見られる。この場合、同じ歌詞が繰り返す場合も1回目と2回目で異なる駅名を使わなければならないため、作者には工夫が求められる。

ただし、丸山駅(埼玉県・三重県・兵庫県に所在)のように、「同名の駅名が複数ある」という場合は重複とは見なされず、存在する数だけ使用することができる(「丸山」であれば3回まで使用することができる)。このため、同じ歌詞フレーズが何度も繰り返す歌においては、このような駅名を使うことでうまく作れる場合がある[2]

全県制覇縛り

日本全国47都道府県全てから駅を登場させるという縛り。これを達成するには沖縄モノレールの駅名も使う必要があるため難易度が高く、この縛りに挑戦する作者は少なかったが、2015年以降になって増加した。

なお、沖縄以外では山梨・石川などが駅の数が少なく全県制覇の障害となりやすい[3]

最近は、ただ動画説明文で全県制覇である旨を表明するだけでなく、動画に白地図を表示して県別の登場状況を可視化した動画が多い。

全県複数周制覇縛り

全県制覇縛りを発展させたもので、各県からの使用駅数の最低値を2以上にしたもの。

全県2周制覇(全県2駅以上使用)が一般的だが、最近は3周制覇以上の縛りも登場している。

現在の最高記録は、組曲以外の普通の曲では全県8周制覇、組曲では全県13周制覇である[4]

重複ゼロ+全県制覇

重複ゼロ縛りと都道府県縛りの両方を達成した動画もあり、現在はこの類型の動画が増加傾向にある。

なお、全県2周制覇以上の場合、原則的には重複ゼロが前提となっている。これは、単なる全県制覇であれば、47都道府県のそれぞれについて「駅が登場しているかどうか」を判定するだけで良い。しかし、2周制覇以上の場合、47都道府県のそれぞれについて、「何駅登場しているか」を知る必要がある。同じ駅名が2回以上使われる場合、2回目以降は除いてカウントする必要があり、県別の駅数をカウントする計算が複雑化する[5]。こういった複雑さを避けるため、全県2周制覇以上の場合は重複ゼロが前提となる。

その他の縛り

「JRの駅のみを使う」など鉄道会社に関する縛りを設けた動画も見られる。

技巧

作詞の自由度を上げたり、ネタを入れたりするために様々な技巧が使われる。

歌に関係のある駅名の使用

曲名あるいはその曲の歌手の名前と同じ、あるいは音が似た駅名を使うことがそれに該当する。例えばaikoの歌で「愛子」駅を使うことがこれに該当する[6]

音節の圧縮

例えば、「他に」という歌詞に「法界院(ほうかいいん)」と当てるなど、「ん」や「っ」などを前の音節に押し込めてしまうことがこれに該当する。なお、長音の有無は駅名替え歌では問題にされない。

モリズミ

例えば、「言葉の」という歌詞に「小牛田(こごた) 穴太(あのお)」と当てて、「小牛田 穴太」を続けて「KOGOTANO」というように、1番目の語尾の母音と2番目の語頭の母音を共有して1つの音として発音してしまうことがこれに該当する。当然ながら、2番目の駅名は語頭が母音である必要がある。

ヒガシラ

例えば、「言葉の」という歌詞に「大鳥羽(おおとば) 板東(ばんどう)」と当てて、「大鳥羽 板東」を続けて「OTOBANDO」というように、1番目の語尾の仮名と2番目の語頭の仮名を共有して1つの音として発音してしまうことがこれに該当する。モリズミに比べて違和感が強く、禁じ手であると感じる人もいるだろう。ただし、テンポの速い曲ではそれほど違和感がない。

逆空耳

歌い方の技術力に工夫を凝らし、より原曲の歌詞に近く聞こえるようにするという技巧のこと。駅名替え歌は多くの場合はVOCALOIDやUTAUが使用されているためこの方法を実用するのは難しく、実例も少ない。

歴史

主な作品

  • 地名・市区町村名の垰瀬内シリーズ

辞書

2016年4月28日想像地図研究所により、駅名替え歌作者向けの辞書として、「日本駅名語辞典」が公開された。

脚注

  1. 「重複がなければさらによかった」などのコメントがしばしば見られる。
  2. 複数ある同名の駅名を複数回使用することさえ避けられた硬派な作品も存在する。
  3. 駅の数は沖縄を除けば山梨が最少である
  4. 全国1450駅の駅名で「ニコニコ動画摩天楼」【全県13周】
  5. 例えば、沖縄県の駅が「首里」が2回、「儀保」が1回登場している場合は、沖縄県の登場駅数は2駅とカウントしなければならない。このため単純にEXCELでCOUNTIF関数で判定することができない。
  6. 実際には「愛子」駅は「あやし」と読むが、「あいこ」とも読みうるのでネタとして成立する。

関連項目

外部リンク