商精反比

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商精反比(しょうせいはんぴ)とは、架空言語架空地図などを始めとする架空世界創作において、内容の作り込み(精緻さ)が増すほど、商用作品としては使われにくくなる現象である。

概要

架空言語架空地図などを始めとする架空世界創作は、その特性上、「世界観自体をつくること自体を目的とした創作活動」である。架空言語作者・架空地図作者は、非常に細かくマニアックな設定を作る傾向があるため、独特かつ固有の世界観が含まれた作品が作られることが多い。

一方で、企業が作りたいアニメやゲームなどの商用作品の世界観には、そこまで精緻な背景世界観は必要ではない[1]。それどころか、架空言語作者・架空地図作者が作った作品は既に固有の世界観を持ってしまっており、企業の作りたい世界観とは合致しないことが多い。

このような理由から、架空言語・架空地図は、精緻に作り込めば作り込むほど、商用作品には使われにくくなる。これを商精反比という。

また、架空言語・架空地図を精緻に作り込むには数十年という時間がかかることが多い。企業の作る商用作品には「納期」が存在するため、企業側も何十年も掛けてつくられる精緻な言語ではなく、短期間で作られるレトルト架空言語を使わざるを得ないという問題もある。

大衆受けと商精反比

架空言語や架空地図は、「世界観自体をつくること自体を目的とした創作活動」であるため、大衆受けを狙うことが難しい。商用作品など企業の作りたい世界観と、架空言語作者・架空地図作者の作りたいものが合致しない根本要因はここにある。

商精両立の方法

逆の発想として、商用作品で使う架空言語に「イカの耳」を作っておくという方法が有効である可能性がある。すなわち、「作った時点ではそれほど精緻な作り込みがあるわけではないが、将来的に精緻な作り込みをするための『布石』を打っておく」(最低限の語彙と文法などを用意しておき、別の人が後からそれを容易に拡張することができる構造にしておく)という方法が有効であると考えられる。

この方法は、商用作品が売れた後に内容の作り込み(精緻さ)を増加させるための方策として有用であると考えられるが、実例は今のところ確認されていない[2][3]。また、そのような「布石」を打っておくことが簡単なのかについても、検討の必要があるだろう。

反論

商精反比という説には反論も存在する。

確かに架空言語や架空地図で大衆受けを狙うことは難しい。しかし、大衆受けを狙うのではなく、学問的芸術(架空世界創作学)として行うか、サブカルチャー受けを狙うことなら充分に可能であるという意見もある。芸術やサブカルチャーとしてであれば商業性を獲得できる可能性があり、以下のような例がある。

  • ヘンリー・ダーガーによる作品『非現実の王国で
    • 厳密には架空言語とは異なるが、非常に凝った内容の設定がなされており、世界一長い長編小説であると云われている。この小説は、執筆開始から完成までの60年間は全く評価されることはなかったが、完成後にアウトサイダー・アートとして評価された。
  • トールキンによる作品『指輪物語
    • 彼は架空世界の言語・地図・家系図・歴史などを含む「架空世界の体系」を事細かに設定しており、設定厨であったことがうかがえる。無論、作中に登場する架空言語であるエルフ諸語は、平成以降に作られた大規模な架空言語に比べて作り込みが甘いことは指摘されるが、彼の時代には大量の情報処理を得意とする高性能なコンピュータが存在しなかったため当然と云えば当然である。
  • テレビ番組「タモリ倶楽部」においても、架空地図を特集する内容が放送されたことがある。

これらの例は、大衆受けが期待できない作品でも何十年もかけて完成度を高め、そしてそれを「芸術」として公表すれば、作者の出自に関わらず評価される可能性があることを示している。

脚注

  1. ただし、スターウォーズのように、後から架空言語を自ら加えたケースもないではない。スターウォーズでは、銀河標準語が会話言語が現実世界の英語と共通であることを偶然として容認しながら、後に筆記言語については独自文字を設定し、映像も置き換えている。
  2. 「スタートレック」のクリンゴン語は、商用作品が売れた後に言語が作り込まれたと云われているが、この言語が「売れた後で作り込みを増やすことを念頭に置いて作られた言語」であるかは不明である。
  3. ジョージ・オーウェル作『1984』のニュースピークも、拡張性という観点ではこの条件を満たしているが、続編をあらかじめ想定してそう設計したものであるかは、同様にして不明である。

関連項目